皆さまこんにちは。

本日もクレエピアノ教室(府中町)のブログをご覧いただきありがとうございます。

今日は、法務省主催の第35回全国中学生人権作文コンテストで「法務事務次官賞」を受賞されました、当時中学1年生の男の子が書かれました作文をご紹介させていただきたいと思います。

中学1年生でこんなにしっかりとした考えをお持ちで、とても13歳の子が書いたとは思えない程、素晴らしい内容です。

人として大切な考え方や思いが沢山詰まっています。

このような方が大人になって、親となり、考え方や思いが子供に受け継いでいかれると思うと、とても心強いです。

そして、この作文のピアノの先生が素晴らしく、とても尊敬します。

私も、今を一生懸命生き、誰かに勇気や元気を与えてあげられる人でありたいです。

是非お読みください。

最後に原文のPDFを添付しておきますので、そちらも是非ご覧いただければと思います。

下記全文(原文のまま)になります。

 

ピアノを弾けないピアノの先生

ぼくの通っている音楽教室の校長先生は車イスで生活しています。
三十歳を過ぎた頃,原因不明の病気を発症して以来,起き上がることもできない日が続き, 何年もの間入院していましたが治らず,自宅で療養することになったそうです。
人がそばを通っただけで,全身に激痛が走るという難病でした。 病気になる前の先生は,音大でピアノを教えていました。
一日十二時間以上も, 毎日生徒さんとピアノにむかっていましたが,少しも苦に思ったことはなかったそうです。
ピアノを弾くことしかなかった人生の中から突然病気にピアノを弾く ことを奪われてしまった先生でしたが,なんと,自宅でピアノ教室を始めてしま ったのです!
自分の病気を嘆くことより,「良かった。これで娘のそばに毎日いてあげられる。」と思ったそうです。
ピアノを弾くことができない人がピアノ教室を始めるなんて普通の人には考えられません。
最初の頃は,そうと知ると,話を聞きに来た人達は皆,去って行ったそうですが,近所の子ども達が通うように なって評判になり,二十年後には全国からたくさんの人が通う大きな音楽教室に なっていました。
先生のすごい所は逆転の発想です。
体が動かなくなったから,それまで忙しくてできなかった研究を,家でじっくりする時間ができたと考え,絶対音感のプロ グラムを作り上げました。
ほとんど寝たきりの体ですごい気力です。
できないことを嘆くことなく,見方を変えてチャンスにしてしまう。
努力は並大抵ではありません。そんなすごい先生も,知らない人から見れば,車イスに乗った障がい者の老人です。
道の端に停まっている時に,じゃまだと言わんばかりに頭を叩いて通る心 ない人がいるのだそうです。
しかも,一度や二度ではないというのです。この人達は,人の中身を想像することができない人なのでしょう。
ぼくは本当に驚き,なんとも言えない悔やしく悲しい気持ちになりました。
ぼくが今,ピアノを勉強しているのは,先生が認めてくれたおかげです。
誰よりもできないことが多く,他の人と一緒に同じことができないぼくでしたが,先生は皆の前で,ぼくの演奏を「花マル満点。」と言ってくれました。
それまでなぐさめられることはあっても,本当にほめられたことはなかったのだと思います。
ぼくに向けられた心からの言葉は,小さかったぼくにも良く分かりました。
先生が心から認めてくれたおかげで,ぼくはピアノが好きになりました。
あの日の先生の言葉で,ぼくの人生は変わったと思っています。
先生は物を大切にする(しすぎる?)人です。
あなの開いたくつ下はていねいに縫ってはく。形ある限り,何年も同じ服を大切に着る。先生のだんなさんも同じように物を大切にする人だそうです。
ある日二人で,音楽教室のお金をおろしに銀行へ行った帰り,後ろから来た男にいきなりお金の入った封筒を奪われてし まったことがあったそうです。数百万円もの大金が入っていました。
あわてて交 番に届けに行ったのですが,二人の身なりがあまりにも質素だったので,「そん な大金を持っていたはずがない。」と,おまわりさんに信じてもらえなかったそうです。
人が人を判断する基準は何でしょう。
見た目で判断していないでしょうか。
着ている服や家庭の環境,学歴,成績,人とうまく話せる人,人見知りな人,運動能力がすぐれている人,自信がある人,ない人,世の中にはいろいろな人がいます。
そして一人一人違っています。
できることや持っている物が多い人は偉い人なのでしょうか?
自分よりできないことが多い人を,自分より「下の人間」 と思っていないでしょうか。
人の価値は持っている物だけではないはずです。
校長先生は三年前の寒い冬の日,小さな風邪がもとで,突然亡くなってしまいました。
先生が毎月一話ずつ書いてくれた「教室通信」には,先生の考えていたことや身の回りで起きたこと,先生が伝えたかった思いが書かれています。
先生は亡くなってからも,いろいろなことを伝え,励ましてくれます。
文章の力はすごいです。直接話を聞いたかのように心に残り,いつでも先生に会うことができるようです。
ぼくは思います。価値ある人は,
上を向く気持ちのある人
人の心を動かすことのできる人(感動)
人の心を暖かくする人
本当に大切なことを知っている人
自分と他人を大切に思うことができる人
ぼくの音楽教室の校長先生は,ピアノを弾けないピアノの先生です。
でも誰よりもピアノを弾くことの意味を教えてくれた最高の先生です。

原文PDFはこちらです→ピアノを弾けないピアノの先生